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| 鳴呼 ダイエット なぜダイエットしなければならないのか. アメリカの漫画「わんばくデニス(Dennis the Menace)」の一コマに,元気あるにもかかわらず, 熱で寝せられているデニスが,訊ねた童子に「小さなガラス棒が,お前は病気だと言ったので,病気 なのだ」と言う下りがある。血糖値が高くダイエットしなければならない私もこのデニス坊やと 同じ気持ちである。 まず, 「身長に比し体重が大きいから,やせなさい。」では,説得力に欠ける。 適正体重が身長のみの関数ではおかしい。人間には個体差があり,同じ身長でも脚の短い人は 長い人より当然重くなる。頭の大きさも,中身の比重も,髪の毛の豊かさも身長とは関係ない。第一, 私は人並みに動きはいいし,体力もある。しかし,若い頃には細身だったが,中年以降肥満し,高血圧, 緑内障に取り付かれ,脳梗塞で逝った父親を思うと,考えを変えないといけないことは分かる。 人はなぜ太るのか 答えは簡単である。身体が消費する以上にカロリーを摂る-運動不足と食べ過ぎである。それは 適正体重だった年齢時の運動と飲食に戻れば良いか。それでも十分ではない。なぜなら,細胞が 老化し,当時のように働かない(頭の働きも同じ) ので,より運動するか,飲食をより減らすしかない。 これは,現実の生活とは全く逆現象である。 元の職場では仕事で毎日1万歩は歩いた。週末は積極的にゴルフにも参加したので,下手なプレ イヤーは2万は歩く。残念ながらこれらは一定時間持続されないので,運動とはならない。更なる運 動が必要であるが,時間的に無理となる。 飲食の方はどうか。戦中戦後の食料難時代に発育期であったため,機会に恵まれれば腹一杯食 べること を身体が覚えている。食べ残さないようにも躾られており,この習慣は単身赴任で更に強 固なものとなっている。これに,適正体重時に摂らなかったアルコールが追加される。腹に溜まるも のでないが,高カロリー食品である。この事実を知る前に酒の味を覚え最大の嗜好品となった。医 師先生に呆れられたが,この酒席では清酒5合で1000カロリー,これに焼鳥などを長々と食べると優 に 1日の必要カロリーを摂取している。 このような生活が続けば結果は明白である。毎日充実して仕事していると本人は思っているが, カロリー収支からはまさに養鶏舎のプロイラーで,柔らかい肉がすぐ付いてしまうことになる。 気持だけのダイエット 同病の先輩からいろいろ助言をいただいた。そのいくっかを紹介する。いずれも挑戦したが長続 きしないものが多い。( )内はその成績である。 ①食事では,一番好きな皿に箸をつけない。,またはすべての皿を半分だけいただく。(〇) ②間食をしない。( ◎ ) ③コーヒーはプラックで飲む。( ◎ ) ④酒と(〇〇) は2合（号）まで。( x ) ⑤ゆっくり噛んで食べる。( x ) ⑥同じ摂るならカロリーが少ない方を選択する。例えば,ジュースはオレンジよりトマト,おでん は半ペんよりこんにゃく・大根,アルコールは日本酒より焼酎。( △ ) ⑦人生すべてに共通なことであるが, 一番好きな飮食物を絶っ。( △ ) 摂取カロリーを強制的に減じる,非科学的なダイエット 前項のようなことでお茶を濁しているうちに 体重は年々増加し, 20年近く前についに適正体重 を14kgも超えた。これでは本格的にダイエットせざるを得ない。3ヶ月で10kg滅が目標。楽ではな いが、腎臓が悪く毎週3回も透析し, 1回で3. 5 kgも体重を落としている知人から見れば,出来ない わけではない。しかし,仕事は忙しく,夜も遅い。友達とのつきあいも欠かせない。したがって強引 に摂取カロリーを減じることとし, ①カロリーの高いものは原則として食べない。要は栄養失調になる。 ②特別の席以外は,酒を絶つ。 一時はガンを罹(かか)ったのではないかと周りに心配をかけたが見事成功した。体重ばかりで なく,あれほど悩まされた数値がすべて改善された。やはり体重が元凶であったのである。この成 功は「その気になれば,ダイエットはいつでもやれる。肥満になることをそれほど心配することはな い。」と妙な自信を得た。その結果,もったいないことに数年後には元に戻り,もう一度同じことを繰 り返すこととなった。 筋トレしながらダイエット 趣味を続けるために筋肉トレイニングが必要になったので,その道に明るい知人の指導でジムで 筋肉トレイニングに励むこととなった。微増して危険域に近づいていた体重の減少を併せて期待し てのことでもある。 初めて経験する筋トレもなかなか快適である。帰りのビールも美味い。しかし,筋トレで筋肉がつ き、体重は更に微増し,またも血糖値が危険域に達し,再々のダイエットとなった。 5kg減じ,それか ら時間をかけて適正体重をめざすこととした。元々,体脂肪率は低いので筋肉を落とすしかない。そ れに山行と筋トレをこれまでどおり続けながらである。結果は,過去の経験が生き,うまく行っている。 しかし筋トレの負荷は下げざるを得具ない 年齢とともに本数を減じていた髪も細くなり,頭皮がみえ るようになった。そろそろ限界である。 一生ダイエットしなければならないのか 料理にも造詣の深い池波正太郎の鬼平犯科帳に,引退後,朝食・昼食に白がゆと梅干し,夕食に酒 と梅干しを愉しむ老盗が登場する。私もそろそろ彼に倣わないといけないのだろうか。この老盗ほど ではないが,これまでも十分飲み,食べてきたではないか。三つや四つの子供であるまいし,なぜ我慢 が出来ないのだと考える。そうでないと, 毎朝早起きしてストレッチとウォーキングを1時間。会合の 予定をみて前後の食事を節する。時々はジムにも通うことになる。生来運動嫌いで怠け者には考え るだけでゆううつである。 気持ちだけのダイエットを数年続け,最後は激しいダイエットのパターンを繰り返すことも,年を取って くると難しくなってくるのではないか。塩野七生著「ローマ人物語」では市民の信頼を失ったリーダー は自死,それも剣や毒でなく,絶食による自死を選ぶ。 これまでいかなくてもダイ工ットする強い意志 を持ち続ける自信はない。それでは昔から言われる「腹八分」ということになる。 農業土木がどんなに警鐘を鳴らしても自給カの向上に国民の理解は得られない今日,農業土木技 術者である私はすすんで腹八分にし,自給率の向上にささやかに貢献し,食料不足が到来するや一人 元気を出し,農地開発に励む日が来ることを夢みて,腹八分で行くとするか。 （全国農業土木技術連盟会誌603号 平成12年3月） |
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