ホーム>山の雑記帳>ふるさとの山 稲佐山―私の山歩きの原点― |
ふるさとの山 稲佐山(333m)―私の山歩きの原点― シリウス・ジャーナル27号 2011年2月に写真を追加 |
長崎は山に囲まれて狭く、高いところまで拓かれていて、美しい。 その様は明治新政府の米欧視察団を、「遠近の峰峰、ミナ俊抜ナリ、 船走レハ…転瞬ノ間ニ種種ノ変化ヲナス、真ニ瓊浦ノ美称ニ負カス、 …世界ニテ屈指ノ勝景地ナリ」と感激させている。 この峰峰の俊峰が稲佐山(いなさやま)である。 この狭いところの底にNHK、長崎駅、魚市場、浦上川、 稲佐山は古くからいいところであったらしい。 「稲佐の山を名に負える・・・」で始まる校歌の稲佐小学校を私たち 初めて稲佐山に入ったのは、 |
稲佐山に初めて登ったのは小学校に入学した春の遠足である。 まだ高射砲の台座が残っていた。 防空壕のために伐られた杉の伐採跡地の植林・育林でも度々登った。 稲佐山からは防空壕ばかりでなく、多くの恵みをいただいた。 野苺、山苺、椎の実は腹を空かした餓鬼には本当に有り難かった。 季節が来ると母から言われヨモギ摘みや柏の葉採りに登った。 これはめったに食べられない好物になるのでうれしいことであったが、 父と出かける石(つわ)蕗採りはその後何日も同じものを食べることになるので 逆であった。 信心深い母が嫌うので生きものを捕ってこなかったが、 |
長崎は土地がないから、学校は尾根を切り開いて造られている。 中学、高校は丘を一つずつ移動しただけなので、 学校から裏山に登ると自ずと稲佐山に至る。自然と山を歩くようになった。 浅い山なので、迷ってもたいしたことにはならず、藪漕ぎも苦にならなくなったし、 かつて山苺を採った秘密の場所を訪ねるのも愉しいことであった。 山に行かないときは2階の縁側に寝転び、双眼鏡で舐め回した。 進学で長崎を離れた頃から、世は高度経済成長である。 それでも帰省するたびに甥や姪を連れて昔歩いた道を好んで歩いた。 それでも稲佐山から見おろす長崎はまだまだ世界のどこよりもすばらしい。 |
次 に進む |
山の雑記帳 に戻る |
今、山へ に戻る |